緑区平子が丘にある「高橋ファミリークリニック」は、地域の内科クリニックであるにも関わらず、遠方からも患者が訪れる知る人ぞ知る存在。専門的な糖尿病治療に強みを持つ高橋信雄院長は、50歳を超えているとは信じがたい程のエネルギーに満ち溢れ、取材陣も魅了された。地元密着のクリニックを基本とするが、先生の活躍するフィールドは、全国、あるいは海外にまで及ぶ。「人を癒やしたい」という基本理念がすべての行動の軸となり、芯が通っているのだろう。クリニック内は常に笑い声や笑顔に溢れていて、楽しい空間であるという同医院のこれまでとこれからについてじっくりと話を聞いた。
(取材日2016年11月1日)
治せる、治せない、そしてたどり着いた方法
―まずは先生が医師を志したきっかけを教えてください。

小さな頃から「人のためになりたい、人を助ける仕事がしたい」という思いがありました。小学生の頃の家庭教師が偶然医学生の方で、医学のお話を勉強の合間に聞かせてくれ、人のためになるお仕事なら医者が良いと勧められたことが最初のきっかけです。しかし、医者になればどんな病気も治せるはずだ、と信じて学び、ようやく医師になったものの、勤務医時代に医療現場で教えられた事実は、医者はすべての病気を治すことはできないし、それは経験を積み、専門性を深めてもなお治せない病気が多い、という受け入れがたい現実でした。
―具体的に何か出来事がおありだったのでしょうか。
勤務医時代から糖尿病治療を担当していたのですが、その際、「頭が痛い」「眠れない」など、不定愁訴を訴える患者さんが多くいらしたんです。不定愁訴とは、何となく体調が悪いという自覚症状はあるが、検査をしても原因となる病気が見つからない状態のこと。先輩医師へ解決のための助言を求めたのですが、返ってきた答えは「不定愁訴の訴えは、放っておけばそのうちなくなる」というものでした。
―そこから先生はどうされたのでしょう?

私はその答えでは納得できないという気持ちを持ち続けていて、以来、何とか患者さんの痛みや苦しみを取り除きたい、と答えを求めて学びました。その結果たどり着いた一つの答えが東洋医学、漢方でした。勤務医時代はできなかったことも、開業してからは西洋医学と東洋医学、良い部分を生かし合うこの「統合治療」に取り組んでいます。
―統合医療の考え方について教えてください。
正しい治療法というのは、時と場合によっては西洋医学だけに留めていては足りません。そこで東洋医学の出番があり、良い部分を組み合わせていくことが「統合医療」です。患者さんにとって最も合う治療方法で進める必要があり、それはケースバイケースで同じ治療方法ではありません。糖尿病の例で言うと、「カロリー学説」があります。一般的に成人男性なら1日に2,500キロカロリー、成人女性なら1日に2,000キロカロリーを摂取しないと健康は維持できないというのがこの学説の示すところです。しかし、人によって必要とする食事内容やカロリーは違っていて、すべての人をこれら学説が唱える数値にあてはめることはできないと思います。その患者さんに合っている方法は何か?その見極めと適切な対応が大切なのです。